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平成26年1月14日最高裁第三小法廷判決
http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014011401001583.html最高裁判所は、血縁関係のない子を認知した父親が、
自ら認知の無効を請求できる事を認めた。
ただし、反対意見が付いている。
私見では、反対意見(認知の無効請求を認めない立場)に
説得力を感じる。
まず、
今回の多数意見(認知の無効請求を認める立場)は、
これまで学説において通説とされている考え方を
採用したものであり、
新たな考え方を示したわけではないと考える。
すなわち、
通説によると、
民法786条「子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる」
という条文の「利害関係人」に、
認知者自身(つまり認知をした父)を含める、というものである。
ただ、私は、判決理由を読むと、全てのケースにおいて、
認知の無効を認めるわけではない、と考える。
場合によっては、認知の無効が認められないことも
今後出てくるのではないか、と思う。
認知の無効請求を認める考えに対しての批判は、
786条の文理解釈についてである。
つまり、
786条の主語は「子その他の利害関係人は」となっているのに対し、
785条は「認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない」
と規定されている。
786条「利害関係人」という文言に、「認知をした父」を含めるのは、
文理解釈としては無理があるのではないか、ということである。
786条に「父」と明示されていないのは、
785条とあわせて考えると、
認知をした父が無効請求できないようにする趣旨だったのではないか。
今回の判例では、父は認知をした際、
子との間に血縁上の父子関係がない事を知ったうえで、認知をしている。
認知をした父による認知無効を認めてしまうと、
子の法的立場は不安定になるし、
それを認めないというのが785条の趣旨であると考える。
786条が認知の無効請求を認めるのは、次のようなケースではないか。
父Aが子を認知した。
このとき、Aは子との間に血縁関係があると信じていた。
しかし、時間が経過した後、DNA鑑定などにより、Aと子の
血縁関係が否定された。
実の父はBであると判明した。
そこでB(786条の「利害関係人」に該当)又は子が、
Aと子の認知無効を求める。
このようなケースを786条は想定しているのではないか。
今回の判例はBが無効を請求したのではなく、
Aが無効を請求したケースである。
また、Aは子との間に血縁関係が無い事を知ったうえで
認知している。
ただし、Aが血縁関係をある信じて認知したものの、
その後血縁関係がないと判明したような場合、
認知無効が認められることはあるだろうと思う。
今回の判例に関しては、認知の無効を認めるべきではないと考える。